藤野 寛之著(阪南大学准教授) *2013年度博士学位論文*

児童書批評誌『ホーン・ブック』の研究

:歴代編集長と協力者 1924-2000年

 

A Study of Horn Book, American Book Review Magazine for Children and Young Adults
: Trends of Reviews by Editors in Chief and Their Advisors 1924-2000


本論考は,アメリカの児童書批評誌『ホーン・ブック』の歴史的な考察である。この雑誌には評論記事のほかに,児童書・児童文学に関する論文,作者・画家とのインタビューから児童の読書論,ストーリーテリング,その他についての文章が掲載されている。取りあげられた児童書については,わが国でも研究者により「作品論」が多く書かれているので,本書では,雑誌の歴代の編集長,および,編集方針に賛同し編集長を外部から支援した評論家・図書館員・出版社員に焦点を当てることとした。こうした人たちによって,児童文学が20世紀前期に「文学」として成立したと見てとれるからであった。

考察の対象となったのは,現在もなお発行され続けている雑誌そのものであり,編集者などについての関連文献であった。本研究で目指したのは,この雑誌が成功した理由の本質であった。創刊当初から,この小雑誌は,ボストンの女性支援団体に支えられており,同族的なグループにより経営を見守られていて,その後,会社組織となって,さらに運営は安定していた。しかし,成功の最大の要因は,「子どもに良い本を」とのかけ声で出発した編集長とそのスタッフをこの方針に共鳴し協賛した批評家・図書館員・出版社員たちが献身的に支援したからであった。以下の研究が,この事情を解明するうえで役立つことを望んでいる。長期にわたり膨大な情報を対象とするため,20世紀における『ホーン・ブック』の全歴史を俯瞰する試みはまだされていない。 〔本書「まえがき」より〕


■目次……

 

 まえがき

 

 序 章:本研究の目的

 

序 説:『ホーン・ブック』の形態・内容的特徴とその文化的背景

 第一章 児童書批評誌『ホーン・ブック』の形態・内容面の特徴

 第二章 『ホーン・ブック』刊行の文化的背景

 

第一部 児童書出版の黄金時代 1924-1950

 はじめに

 第三章 『ホーン・ブック』の創刊と初代編集長バーサ・マオニー

 第四章 『ホーン・ブック』の編集方針

 第五章 協力者たち:アン・キャロル・ムーアとアリス・ジョーダン

 第六章 出版社の関与:ルイーズ・シーマンとメイ・マッシー

 第七章 1924-1950年のエッセイ(概要と抜粋)

 第一部のまとめ

 

第二部 戦後アメリカの興隆と児童書 1951-1970

 はじめに

 第八章 編集者と協力者たち:リンドクウィスト,ヴィグァース,ウィリアムス,スコギン

 第九章 「ウォルト・ディズニー批判」とフランセス・セイヤーズ

 第十章 執筆者の変遷:日本児童文学の批評・紹介を中心に

 第十一章 挿絵画家(イラストレイター)の台頭

 第十二章 1951-1970年のエッセイ(概要と抜粋)第二部のまとめ

 

第三部 変動の時代と児童書の系譜 1971-2000

 はじめに

 十三章 編集長と協力者たち: エセル・ハインズ,アニータ・シルヴェイ,その他

 第十四章 マイノリティ(少数民族)に対する評論の推移

 第十五章 ヤング・アダルト図書の系譜

 第十六章 新たな「ファンタジー」作品の登場とその評価

 第十七章 1971-2000年のエッセイ(概要と抜粋)

 第三部のまとめ

 

 終 章:結語

 

 補説:近年の動向

 

 索引

 

 参考文献一覧

 

 図版一覧

 

 あとがき


◎A5判・糸上製函(229頁) *索引/解説を付す

◎価格15,000円 ISBN978-4-907236-00-7

◎2013年3月刊行