◎二十五年の誌歴をもつ雑誌『少年少女譚海』……
乱立気味の少年少女雑誌のなかで大正期から戦時期まで存続した博文館の児童雑誌。創刊時、児童雑誌総合化の流れの中で、一、「少年少女」のすみわけを行わない、二、創作読物を中心とする、などの編集方針を採用。また戦時は存続のため成人向科学雑誌に転換を図るなどその雑誌としての歴史自体も興味深い。
◎少年少女雑誌メディア研究の空白を埋める……
本誌は少年少女雑誌の中でも特異なポジショニングを占めその位置づけの困難さから既存の児童文学・出版史研究などにおいて着目されずにきた。その全貌をつかむはじめての基礎資料。1920年1月創刊号以降1944年3月廃刊号までの目次を可能な限り集成・通覧する環境を整備。
◎既存の概念(芸術化/大衆化児童文学雑誌)に問いを立てる起爆剤……
1918年『赤い鳥』創刊、この後『おとぎの世界』『こども雑誌』『金の船』『童話』など芸術的児童文学の雑誌創刊が続く。一方、大衆的児童文学の雑誌には『少年世界』『日本少年』『少年倶楽部』『少女倶楽部』などがあり、なかでも『少年少女譚海』はさらに「低俗」とされてきた。
しかしその『少年少女譚海』の目次・内容から芸術的/大衆的児童文学雑誌という区分を問い、「もっと複雑でダイナミックな関係性がある」(上田信道)という指摘が近年なされた。その指摘にこたえ、認識を促すための一助となるであろう基本的な好資料。
◎解題・索引を備え、大正~戦時期の児童文学・文化研究に新たな視野を提供……
メディア社会学・大衆文化論・出版史を中心にして「少女」概念の創出・変遷に取組む若手研究者が懇切な解題をほどこす。各所に散在する目次を集成、執筆者名から検索できる索引を作成し文献群への横断的な使用にも対応し、児童文化・文学・文化研究の新たな分析に資する。
▶執筆者索引(修正版)